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カァ――。カァ――。 不思議な楽器店へと足を踏み入れてしまった私は妖精の人形と優しいお婆さんに会い、何故かピアノを弾くことになって、子犬のワルツを弾いていれば何と! 眩い光に包まれて気がつけば金色のコルダの世界へ来てしまっていた!! 最初は夢かとも思ったが、生の志水を見れば嫌でも理解出来るだろう。 それが分かって一時嬉しくて頬が緩みきってしまったが、私は重大な問題を忘れていた。 星奏学院の敷地をコソコソと歩いているのだが、すでに青かったお空も今は夕空に染まっていた。 . . 何ということだ・・! 「私、これから住む家がないぃ・・・・っ」 どうしょ。どうしょう。 お空を飛んでいるカラスが私にアホーアホーと言っている気がする。 は考えれば考える程不安はつのってきて、の体を夜になっていく冷たい風がビュウと吹いた。 はた、とちょこまかと動いていた体を止め、当たりを見れば妙に木などが多い気がする。橋がかかっている小さな湖(?)のようなものやベンチ、そして学内音楽コンクールの始まりを告げるあの鐘があるではないか!! 此処は何度も見たことがある。というかテレビから見て知っている。 「・・此処は、森の広場・・・」 いつの間にこんな処に居るのだろうか。素晴らしいな、私。 ちらほらと生徒が居るということはまだ最終下校時刻ではないらしい。それよりこれからどうするか、だよね。 木の陰に隠れながら、うむ。と腕を組んでない頭で思案する。今私の持ち物はポケットに入っていた携帯と財布と家の鍵のみ。 何処かのホテルとかに泊まろうにもそんだけ金がある筈がない。 女子高生のお小遣い舐めるなよ。(性格が変わっているような・・?) 「くそぉ・・・。あの妖精のせいだっ」 ――妖精?そうだよ、あのリリのせいじゃないか!何で被害に会った私がこんなに悩まなくちゃならんのだよ、 とりあえずこの学校に住んでいるファータの妖精(あれ、同じ意味?)を呼び出し、この事態をどうにかしてもらわなくては! すぅ。と息を吸い込んで大きな声を出そうとするが、日頃そんなことをしないせいで大きく咳き込んでしまう。 ごほッ。ごほッ。ぐ、ぐるしいぜぇ・・。というかこんな処でしかも大きな声で”妖精さん”なんて呼べば変質者決定ですね。 「よ、妖精さぁ〜ん、出て・・・来やがれぇぇぇッッ」 〔ひー!わ、我輩は此処なのだー!!〕 「・・あら、意外と早かった」 〔さっきと全然喋り方が違う・・。さっきのは恐ろしかったのだぁ〕 「何か言いまして?」 ちょっと乱暴な言葉遣いで呼べばすぐに妖精、リリがの前にすっ飛んで来た。ゲームで見ていた通り小さな体でパタパタとこれまた小さな羽根で飛んでいた。 リリはさっきまで強張らせていた顔をにっこりと笑顔にし、こちらへと近づいてきた。 〔うむ。気を取り直して。お前の名前は何と言うのだ!?〕 「・・・ ですけど、」 〔というのだな!我輩は・・・〕 「リリ。ファータという種類の妖精で、階級はアルジェント」 〔!我輩を知っているのだなっ。やはり我輩が見込んだことだけある!〕 「・・・じゃあ、やっぱりアンタのせいなのね・・・?」 何故かとっても嬉しそうなリリを見て、は確信する。 「どうしてくれるの!?私この間々じゃ野宿しきゃいけないじゃないの!・・いや、まぁ此処に来れたのは嬉しいけど、」 〔お、落ち着くのだ!今から説明を・・っ〕 「当然です」 ふぅ、と息を吐いてリリは小さな体をくるりと回転させ、をその綺麗な瞳へと映した。 〔我輩は数日前から学内音楽コンクールの参加者を探していたのだ。そして見つけた、お前で7人目!!〕 「えぇっ!?で、でもどうしてあそこにリリが居たの・・?」 〔あぁ、あれか?あの人形は残念ながら我輩ではない。此処からは出れないから、何とか意識だけそちらの世界へ飛ばしていたのだ〕 「?どうしてそんなことをする必要があったの?」 〔コンクール参加者を探す為、いや、音楽を多くの者達に広める為なのだ!・・実を言うと引き寄せられたのだ、が居た世界に〕 「そんなことが出来るんだ!引き寄せられたって・・・?」 〔お前の音楽を愛しているという心に引き寄せられたのだ!きっとお前なら音楽を多くの者に広められると!!〕 「いや、そんなこと言われてもそんな大したこと出来ないし、そんなスケールのデカイことを急に言われても・・・」 やばい。何だか知らない処でえらく話が大きくなっているらしい。キラキラとした瞳で見られ、うッと一瞬言い澱む。 「そ、それより私の家は?リリが此処に呼んだんだから、どうにかしてくれるんでしょう、ね?」 〔・・・・・・・・・・・・。〕 「ちょっとちょっと、そのアッて顔なに!?もしかして考えてなかったんじゃ・・・」 〔ご、ごめんなのだ!!〕 「許すかァァァッ!!!」 すごい血相になったのだろう、リリは大きな瞳に涙を溜めてまるで化け物を見るような顔でこちらを見ないで下さい。マジで。 「・・・ごほんっ。じゃあ家と食料確保してくれて、この学校に通わせてくれるんなら許そう!」 〔本当かっ!?まぁ、もともと学校には通わせるつもりだったのだ。・・・うーむ。衣食住はどうしよう・・〕 これは譲れない。というか本当にお願いしますよリリさん。 リリはひとしきり悩むと、パッと顔を明るくさせて、”ついて来い!”と言って来た。大人しくちょこまかと飛ぶリリの背を小走りで負いかける。 まったく、何処に行くつもりだろうか? 〔まだ帰ってなければ良いのだが・・・〕 え、此処って星奏学院の正門じゃないか。下校している生徒から不審な視線を感じるのですが、、、 リリはお目当てのものを見つけたのか、声を張り上げた。(まぁ他の人には聞こえないのだが) 〔志水 桂一!〕 あれ、空耳でしょうか。数分前にお別れをした彼の名前を呼ぶリリ。 金色のくるりとした癖毛を揺らしながら、ゆっくりとした動作で天使は振り返った。・・・相変わらず体とは似合わない大きなチェロをお持ちで。 「・・・あ。何の用でしょうか?妖精さん」 「ちょーっとこちらに来てお話しましょうねぇ、志水くん」 周りに人が居るのに空に向かってお話してはダメだよ、志水くん。 「貴方は、少し前にお話した方ですよね?」 「そ、そう。また、会っちゃいましたね、(すっごい嬉しい!)」 〔おっ?お前達知り合いだったのか?ちょうど良い。志水!のことを頼んだのだ!!〕 「「は・・・?」」 のだ。のだ。煩い小さな妖精の言葉はまるで宇宙人と話しているようで、の頭痛の原因の一つとなった瞬間であった。 さぁいつまでもワルツを踊りましょう //奏でられる円舞曲
008.10.18.20:05←back! |