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 普段の彼女からは考えられないほどの速さだった。
 神速の攻撃を受けるユーリの意識から、時間の感覚が無くなっていたのはいつからだろう。
 
 
 周りで見守っていた面々が言うには、終わるまで五分足らず。あっという間のやり取りだったらしい。
 もちろんそんなことが、その時の自分たちに分かるわけはなかった。

 正面から来た剣を横に避けながら、ユーリは足にぐっと力を込めた。
 姿勢を低くしてそのばねで飛び上がるように向かっていく。繰り出した刃はたやすく相手の刃で受け止められはしたものの、
こちらが押し出す勢いで相手がふらついた隙にユーリは手を伸ばそうとする。
 
 が、甘かった。
 かすかに聞こえてきた声が詠唱だったと気付いた瞬間には、まぶしい光で弾き飛ばされていたのだ。
 すばやく起き上がりつつ、ユーリは内心冗談じゃない、と思った。
 ひとつ大きく息を吐いて歯を食いしばり、畳み掛けるようにきた払いを中腰でなんとか受け止める。
 

 その情け容赦ない攻撃に、やはりやさしさと甘さは紙一重だったのだとユーリは思い知る。
 つまり普段こいつは、自分でも無意識に力を抑えていたんじゃないのか。本当はためらいさえ捨てれば
どんな相手だったとしてもねじ伏せるほどの力を持っていたのだ。


 息継ぎの間も与えずに加えられる剣を受けながら、相手の顔をユーリは捉えた。

 なんの表情もない人形のような顔。
 透き通った碧の瞳に歯を食いしばって耐える自分の姿が映るばかりだった。



 どうやって終わらせるか。その覚悟はしてきたつもりだった。
 でも彼女が選んだのは、こんな息も殺して耐えるしかないような苦しい終わりだったのだろうか。
 自分が選んだのは、こんな能面のような彼女を切り捨てる方法だったのか。



 奥歯を噛みしめ、ユーリは何度も来る払いを受けていた自分の刃を下げてすばやく姿勢を低くした。
すぐ頭上をかすめた剣を意識しつつ、相手の脇をすり抜け背後に回った。


 振り向きざま、相手の首筋を視覚に入れるとすぐに剣を向ける。



 そこで見てしまったのだ。



 振り向いた相手の、この戦いの間ひとつも人間らしい感情を移さなかったまなざしを。
 今はじめて、絶望を予感したその奥にある悲しみを。
 少しもためらいなどない死への道筋を。


 すぐに沸いてきたのは、怒りだった。

 ふざけるな。






 声を出そうとすると、ひどく喉が渇いていたのに気付く。
 まばたきほどの瞬間に、ユーリは足を踏み込んだ。