目覚め
ヴィーナスとウラヌスが交替してから二時間後、今度はサターンとマーキュリーが交替し、ヴィーナスが警備・マーキュリーが簡易ベッドを使っての休憩に入る。

夜天は、他の者が休めと言っても頑なに簡易ベッドを使って休もうとせず、セレニティの眠るクリスタルのそばで警備を続けていた。

そのようにして、マーズ・ジュピター・ネプチューン・プルートも休み、休憩する者が1巡し、2巡目も半ばまでまわった頃。

その時は、急に訪れる――。


うさぎに自らのエナジーを送り込んでいた、守護戦士たちの発していた光がフッと消え、戦士たちはガクリと膝をつく。

クリスタルはスウッと消え失せ、うさぎの瞼が痙攣した。


「うさぎ……っ!」

夜天の声に、うさぎの瞼がゆっくりと瞬き、声のした方向に視線を流す。


「……夜天くん……? あたし……?」


白いドレスは、フッと薄れ、額の聖印も消えて、メイド服姿のうさぎに戻った。


「良かった! うさぎちゃんっ!」

大きく息をつきながら、目に涙を浮かべて、マーキュリーが嬉しそうに言った。


「取り敢えず、目が覚めて良かったけど……まだ全快ではないね」

うさぎの両頬を両手で挟み、その顔色や、瞳の力強さ等を検分しながら、夜天が言った。


「うん……ごめん……。なんか、起き上がれそうにない」

非常に身体が重く感じる。うさぎは夜天に、素直にそう告げた。


「この様子じゃ、まだ星をこえて地球へ帰るのは、身体が耐えられないと思う」

「いいよ。とにかく、暫くは大人しく寝ていること」

ウラヌスもうさぎが目覚めたことにホッと一安心した表情で、そう言った。


「うさぎさん、ありがとうございます。真空を助けてくれて……」

深々と頭を垂れる火球に、うさぎは慌てる。

「そんな、私こそ――夜天くんに、助けて貰った……んですよね」

うさぎは自分の中に、夜天の力を大きく感じていた。


「皆も……力をありがとう、ごめんね……」

意識のない間ずっと、仲間たちが自分にパワーを注ぎ込んでくれていたことも、うさぎには分かった。


「もう無茶はしないでよ、うさぎ」

疲弊した様子のマーズだったが、うさぎの無事の喜びの方が大きかったらしく、うさぎの頭に、優しくポンポンと触れながら言った。


 


**********


 


「ん……」

目を覚ますと、一瞬、うさぎは状況が掴めず、戸惑うが、すぐに安堵した。

自分を抱きしめてくれている、あたたかい腕。

時間が気になり、夜天の腕の中、起こさないように、そっと体を動かす。


「……っ」

夜天が、小さく声を漏らしたと思うと、うさぎを抱きしめる腕の力が強くなった。

「んっ――」

思わず声を漏らした途端に、腕の力が緩む。


「夜天くん……起こしちゃった……?」

自分を見上げて問いかけてくるうさぎに、夜天は少し驚いた顔をした後、再びキツくうさぎを抱きしめる。


「く……っ、苦しいよぉ……!」

「良かった。うさぎだ」

「んん??」

夜天の言葉の意味が分からずに、うさぎは困惑する。

構わず、夜天はうさぎを抱きしめたまま、触れるだけのキスを落とした。


「今までも、何度か起きて、話もしたけど、意識は朦朧としているみたいだったし、声も弱々しかった」

けど、意識はやっとしっかりしたみたいだし、声にもハリが出てきた。と、夜天は嬉しそうに言った。


「こうしてると、寝にくい? 離れた方がいい?」


「ううん、離れちゃ、ヤダ……」

キュッと夜天のシャツの胸元を掴んだ、うさぎの顔を、夜天は笑みを浮かべて覗き込んだ。

「冗談だよ。そう言うと思って」

言わせちゃった、と、くすくすと笑う夜天に、うさぎは拗ねたように頬を膨らませたが、すぐにつられて笑ってしまう。


「夜天くん……。今度は、あたしが夜天くんのこと、ぎゅってしていい?」

「……いちいち、許可なんかいらないよ」


うさぎは夜天に、強く抱きついたつもりだったが、その腕の力は弱々しく、震えていた。

しばしの沈黙のあと。


「わっ!?」


うさぎが、驚きの声をあげた、次の瞬間。

ぐるりと視界が回って、目の前に見えるのは、天井と、夜天。


「まだ、力は全然入らないみたいだね」

心配そうに、うさぎを見下ろす、夜天の顔。

うさぎは震える手を伸ばし、両手で夜天の頬を包む。そして、その顔をゆっくりと自分の方へ引き下げる。

「? うさ……、っ」

「ん……」

驚く夜天の瞳を見つめながら、夜天の唇へと、うさぎからキスをした。


何度も何度も唇を重ねる二人の呼吸は、だんだんと荒くなる。

触れるだけだった唇が、深く合わさって、いつの間にか主導権は、うさぎから夜天へとうつっている。

うさぎの唇をこじ開け、夜天の舌が口腔内へ侵入し、その激しさに戸惑い逃げそうになるうさぎの舌へ絡みつく。


「夜天く……、んっ」

「……は……っ、好きだよ……。うさぎ」

「ん……っ。うれしい……。あたしも、大好き……。夜天くん、大好き……」


いつの間にか、枕の上に落ちていたうさぎの手は、そっと、優しく繋がれる。

夜天は、うさぎの無防備な首筋へと吸い付いて、痕を残そうと――。


「夜天様、セレニティ様のお連れの方が――」

コンコン、とノック音と、ムネモシュネの声が聞こえてきた。


「星野……ではなかったか……」

ヤツだったら、そろそろブン殴ってやろうかと思ったのに……と、ブツブツ呟きながら、夜天はしぶしぶドアへと向かう。


「誰、何?」

「セレニティ様がお目覚めになられたはず。と……仰るのですが」

半信半疑、といった様子のムネモシュネ。

その後ろには、外部太陽系戦士の4人の姿が。

本当に、うさぎの気配には鋭いな、と思いながら、夜天は小さくため息をつく。

「ああ。今さっきね。――ドーゾ」

小さく開いていた自室のドアを、人が通れるように大きく開く。


「具合は、どう?」

「はるかさん」


部屋に入ってきた仲間たちを見て、肘をベッドに付いて起き上がろうとするうさぎだったが、うまく力が入らないようで、ヨロヨロとしている。

「大丈夫? 無理しないでよ」

夜天が、サッとうさぎの元へ駆けつけ、上半身を起こし、ヘッドボードに寄りかかるよう、座らせてやる。


「熱は、もうすっかり下がったのかしら?」

「みちるさん。熱……って?」

レイに頭を撫でられた記憶から先がない。


「覚えていないですか? はじめに目を覚まして少ししてから、高熱が出たのですよ」

「すぐにこの部屋へお連れして、しばらくはせつなママと私で看病させていただきました。あ、もちろん夜天さんも」

「えぇ、本当? ごめんね、全然記憶がない……。せつなさん、ほたるちゃん、夜天くんも。どうもありがとう」


「いえ。ある程度、容態が落ち着いたところで、夜天さんにお任せして、私とほたるは休ませてもらいましたから、そんなに大したことはしていません」

「大したことはできないから、僕たちと同室に、って言ったんだけどね」

せつなの言葉に、はるかが不満気に続く。

「はるかったら。しつこくてよ?」

みちるが、はるかの口に人差し指を当て、黙らせる。


「はるかパパが、私たちのお借りした部屋へ、プリンセスを一緒にお連れして、看病したいって言ったんです。
でも、夜天さんも、うさぎさんはずっとこの部屋にいたからって、引かなくて」

「もう、いつもの応酬よ」

ほたるの説明を、みちるがまとめた。


「失礼しま〜す。うさぎちゃん、どぉ?」

開いたままだったドアから、美奈子がひょこりと顔を出した。


「はるかさんたちから、うさぎちゃんが多分気付いたと思うって聞いて。車椅子借りてきたよ」

美奈子のあとから、まことが車椅子を押して入って来ながら言う。


「まだ歩くのは難しいかしらと思ったんだけど、座っているのも辛いかしら……」

「亜美ちゃん。ううん、もうだいぶ気分も良いの。座るのは、何ともない」

「そう。じゃあ、気晴らしに外の空気でも吸いに行かない? すごく良い天気よ。あたしたち、ここに着いてから、誰かさんが起きるまで遊びに行くわけにもいかないしで、ずっと室内にいて退屈してたのよ〜」

レイはいつものように意地悪な物言いをしているが、自らのパワーをうさぎに分け与えたことによる、仲間たちの消耗を気にしないようにの配慮だと分かる。

自分たちは、もうすっかり元気で、早く外に出たいくらいなのだと伝えているのだ。

うさぎは、「うん!」と、嬉しそうに返事をした。


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お正月休みの間に、胸キュン少女マンガ読んで、キュンキュンパワー(笑)を補充したら、夜うさイチャイチャシーンが書けました♡



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