団欒
「お団子ぉおぉおぉっ!!」

庭園で、談笑していたところに、ドタバタと星野が駆けて来たかと思うと、飛び付くように、車椅子ごとうさぎを抱きしめた。


「むぎゃー! 星野、苦しい……っ!」


驚いたうさぎが叫ぶや否や、夜天がバリッと星野の首根っこを掴んで、引き剥がす。


「車椅子に乗ってんのかよ。歩けないのか? どうなんだよ、体調は!?」

夜天に数メートル飛ばされたことなど、気にすることもなく、勢い込んでまた近寄って来、うさぎの容態を聞きたがる星野。


「まだ起き上がるのが精一杯で、立ち上がる事は出来ないってとこかな」

「顔色が、まだあまり良くないですものね」

いつの間にか、大気も近くに来ていて、うさぎを心配そうに見ている。


「うさぎさん」

背後を振り返ると、火球が心配そうな表情で立っていた。


「良かったです。起き上がれるようになったと聞いて……」

振り返ったうさぎの顔を見て、安堵の表情を浮かべた。


「どうしても直接御礼を言わせて欲しい、と。……真空です」

火球の横に立っていた真空が、スッと1歩うさぎの方へ近づく。

「真空です。何と言ことばを尽くしても、何をしても御礼にならない気がするのですが……この度は、本当に、ありがとうございます」


「いえいえいえ! あたしは、その、何も……と言うか、あたしの方こそ、火球プリンセスや、大気さんには、とってもとってもお世話に……あ、もちろん夜天くんと星野にも……」

「おい! 俺と夜天は付け足しかよ?」

「あ、いやぁ、その……火球は、婚約者でしょ? それから大気さんは家族だから、と思ったんだけど」

「うん。それで良いと思うよ。僕と星野は別に……」

「や、でも、火球の婚約者ってことは、キンモク星のプリンス? だから、その星の戦士にお世話になった場合も、やっぱりお礼か……と思って足してみた……」


「ハッハッハッハッハ!」

うさぎと、星野、夜天のやり取りを黙って聞いていた真空だったが、こらえきれない、といった様子で笑い声をあげた。


「いやぁ、失礼。楽しいお嬢さんだ」

「シ、真空さまっ……“お嬢さん” は失礼かも、と……」

火球と真空の側に控えていたムネモシュネが、慌てて真空をたしなめた。

「ああ、そうか。申し訳ありません、プリンセス・セレニティさま」

「いいんです、いいんです、全っ然気にしないです!」


 


和やかな空気に包まれていた場に、深刻そうな表情を浮かべたレテが、駆け寄ってきた。

「火球様。戻りました。ヴァンボルトの実家まで行ってきたのですが……やはり戻っていないようです」


「そう。分かりました。レテ、どうもありがとう。ご苦労さま」


頭上に「?」を浮かべたうさぎに、夜天は説明をする。

「真空が戻ってきて、うさぎが倒れた日から、姿がないんだ」


「やはり、彼がわざと、だったのでしょうね。あの時真空のスターシードを砕いたのは」

小さくため息をついて、大気が言うと、星野はその言葉に頷き、言った。

「そして、再起不能にするため、破片を隠し持っていた……か」


「残念ですが、彼は皇家から除籍し、爵位も剥奪させることにします」

「それは……仕方がないことだとは思いますが、本当に大丈夫でしょうか」

例えば、逆上したヴァンボルトが何かしてくるとか……と、火球の決断に、心配そうにする大気。

「大丈夫だ! そんなことになっても、今はもう俺がそばについているし、もちろん警備も強化するつもりだ」

何も心配ない! と、力強く言う真空に、火球は嬉しそうな顔をする。

そして、お互いを愛しそうに見つめる火球と真空の様子に、その場にいた全員が祝福の眼差しを向けた。


 


と、星野の袖が軽く引っ張られ、仲間たちの輪から、少し飛び出した。


「ん、何?」


袖を引いた主は、ムネモシュネだった。


「お前……顔赤くねぇ? 熱か?」

どことなく赤らんだその顔色に、星野は疑問の声をあげた。


「いえ、体調は悪くありません! えっと、そのっ……! 星野様、セレニティ様がお好きですよね?」

顔の赤さはいっそう増し、ムネモシュネは慌てたように言う。


「えっ! や、なんだ、その……なんで……」


慌てた星野の返答に、やはり……と、悲しそうな表情を浮かべ、少々俯いてムネモシュネは続ける。

「でも……セレニティ様には、夜天様がいる……。どうしたい――どうされるのですか?」


「どうもしねーよ?」


「え」

驚き、ガバッと顔をあげた。


「俺は、あいつら二人ともが好きだ。その二人が幸せならそれが一番!」

「でも!」

「好きって気持ちってさ、やめよう、って思ってやめられるもんじゃねーじゃん?」

反論しようとしたムネモシュネを許さず、星野は言葉を続けた。

「だから俺は、今はこのままで良いんだ。もちろん、夜天がおだんごのことを泣かせたり、傷つけるんだったら、かっさらうつもりだけど」

だって、そン時は俺、きっと夜天のこと嫌いに思うじゃん? ふざけたように言って、小さく笑う星野。


「――どうもしない。このままで良いんですね……」

少し考えこんでから、ぼそりと星野の言葉を繰り返し、ムネモシュネは青空を見上げた。

長い間の悩み事が吹っ切れたような表情だった。


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ちょっと遅れてしまった! 夜天くん、ヒーラー。昨日はハピバッ♡
2018.03.09 加筆



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