『全国で、桜の花の便りが聞かれるころとなりました。


新入生のみなさん、このたびは、十番高校へのご入学おめでとうございます。

在校生を代表して、わたくし、生徒会長の殿間(でんま)が歓迎の意を表したいと思います。

ここからの高校三年間ですが、悔いのない学校生活を送れるように頑張って下さい。


この高校の特徴は――』


「うさぎちゃんっ。うさーぎちゃんっ!」


「え!? あ、何、美奈子ちゃん?」

体育館の、開いた窓から入ってきた春の風に頬を撫でられ、気持ちの良い眠りに落ちかけていたうさぎだったが、仲間の声に、ハッと意識を取り戻した。

「今日から、クラウンの期間限定ケーキ、替わる日じゃない? 入学式、終わるの早いし、行こうよ!」

「そうだね! 行く行くー♡」

「あたしもあたしもー」

「コラ、そこ! 私語を慎みなさい!」

美奈子とうさぎの話に、まことが加わったところで、教師からの叱責が飛び、周りからのクスクスという笑い声も聞こえた。


うさぎは竦めた首をソロソロと戻し、ちらりと壇上を見上げた。

すると、マイクの前の人物はこちらを見ており、うさぎと目が合うと、パチリとウィンクをして見せた。


「あれ、うさぎちゃん。堂馬先輩、知り合いなの!?」

その様子を見て、美奈子が勢い込んでうさぎに聞いた。

「ドウマ? 誰それ?」

「殿間堂馬先輩。今挨拶してる、生徒会長だよ」

「うさぎちゃん何で知らないのぉっ!? 成績優秀・スポーツ万能! しかもイケメン! 生徒会長になるべくしてなったオトコってことで、今女子たちの間で人気ナンバーワンなのにぃ」

「カッコイイよなぁ♡」

「人気なの? 知らなかった〜ドレドレ……」


「お〜ま〜え〜た〜ち〜!」


うさぎが、片手を目の上にやり、ひさしを作って再び壇上の人物を見定めようとしたところで、わなわなと震えながら、顔を真っ赤にした先ほどの教師から怒りの声が。

またもや亀のように首を竦めたうさぎだったが、今度はそのままこっそりと生徒会長を仰ぎ見る。


会長はまだうさぎの方を向いていて、目が合うと、ニッコリと微笑んでみせた。


「……?」


自分たちが騒いでいたので、注目されていても仕方が無いのだが、うさぎは自分だけにリアクションを寄越す生徒会長に、どことなく違和感を感じて不思議そうにした。


 


**********


 


放課後――。

いつもの喫茶店「クラウン」で、うさぎ達5人がめいめいのケーキに口をつけ始めた頃だった。


「それで? 夜天くんから連絡がこなくなって、どれくらい経った?」

「最後に喋ったのが春休みに入ってすぐくらいだから、もう2週間くらい……」

レイの質問に、うさぎが答えた。


「2週間? でも夜天くんって電話とかメールとか苦手そうじゃない」

「それがさぁ! 結構連日だったわけよ。たまに間が空いても、2・3日だったわよね」

愛の力は偉大ーってかんじ! と、美奈子がおちゃらけて続けるが、うさぎはどこか力なく微笑むだけだ。


「そうか、だからだよ! きっと夜天くん、無理してたんだ。今は筆無精の地が出てるところなんじゃないかな」

「無理……させちゃってたかなぁ?」


「“無理” っていうか、ん〜……頑張っていたけど、休憩中ってかんじかしら!」

まことの台詞に、いっそう暗くなってしまった様子のうさぎに、慌てて亜美がフォローを入れた。

そして美奈子も。

「そうそう、もう少し経ったらきっとまた連絡くるわよ!」


「うん……そだね、ありがとう」

仲間たちの気遣いが分かり、心配させまいと笑って見せるが、うさぎの目線は下に落ちてしまっている。

4人は困ったように顔を見合わせるしかなかった。


------------

さーて、あまり先を決めずにとりあえず始めてしまいました、第3部!(恐ろしい……)どうなるかわたしにも分からないけれど、ノロノロと頑張ってみますね!



 →  Topに戻る 

 
 

2style.net