最後の会話
「そもそも最後はどういう会話だったの?」

「うんとねぇ……」

レイの質問に、うさぎは回想をする。


 


**********


 


『ん〜……』

パソコン画面の向こう側で、夜天が疲れたように机に突っ伏し、唸っている。


場所はうさぎの部屋。

机の上には、新調したデスクトップ型のパソコンがある。

そのパソコンに、ルナが通信機能を付け、キンモク星とのやり取りもできるようになったのである。


時間は23時を少しまわったところである。

毎晩、23時になると、うさぎはパソコンをつけておく。

そして、夜天からの連絡を待つのが最近の常であった。

30分過ぎても何もない時には、忙しくて連絡できない日、ということで、待たずに眠る約束になっている。


「どうしたの、大丈夫?」


『レテの調子が悪くてさ。もうちょっと時間かかるかも』

「え、レテさん、具合悪いの?」

『いや、そうじゃなくて。対戦能力がね、あと一歩上がらないんだよなぁ……』

身体を起こしたと思ったら、今度は椅子の背にもたれかかり、目を閉じてぐったりとした様子だ。


「……少し痩せたね。大丈夫?」


『そう? 自分では余分な肉が落ちて、がっしりしてきたかなぁ、と思ってたんだけど』

筋肉を確かめるように腕をさする夜天。


「えぇえ? 余分な肉なんてなかったよぉ。そこらへんの女の子より細いんだから。それ以上落としたら夜天くん、骨と皮だけになっちゃうよ……」

女の子より細い、という言葉に、男らしくないと言われた気がして軽くムッとしたような夜天。

『そんなことないダロ。見てみる?』

言うが早いか上着のボタンを外し始めてみせる夜天。

「いいいいい! イイ、イイよいいよ!」

『遠慮しないで良いってば。もー、うさぎったら変態なんだからさ』

上着を脱ぎ終え、夜天は続けて下に着ていたTシャツを捲り上げようとする。

「!! もーーー!!」

うさぎは顔を真っ赤にして、膝の上に抱いていたぬいぐるみを振り上げ、パソコンの画面、夜天の顔に当てようとする。

アハハハ、と堪えきれず笑い声を上げながら、夜天は、ぬいぐるみがうさぎのパソコンの画面にあたる寸前、素早く通信機のスイッチに手を伸ばす。


プツン――と通信が切られる。

ポスン、とぬいぐるみがパソコンに当たって落ち、後には、机の上のスタンドライトと通常のデスクトッップ画面に戻ってしまったパソコン画面の光、静寂が残る。

「あーっ! いっつも勝手に切るんだからぁ!」


 


**********


 


「……っていうかんじカナ」


「それは何ていうか、その……」

「羨ましい!」

「うさぎちゃんったら……ハレンチだわ」

「ちょっと待てぃっ! あたしはっ純粋に心配をっっ!」

まことや美奈子、亜美があらぬ誤解を抱いていそうなので、うさぎは慌てて否定しようとする。


「ていうか、そういう会話の時ってルナはどんな気持ちで見ているのかしら」

「その時は、ルナは出かけてたかな。いつも最初の挨拶だけして、夜の散歩に出かけちゃうの。あ、でも3日に一回くらいは“離れがたい〜” って言って最後まで居座るけど」

「そうそう。その散歩ってアルテミスとの、なんだけどね、ルナが待ち合わせ時間に来なかった日には、落ち込んだ顔して帰ってくるのよ(笑)」

ルナが夜天くんに取られる〜とか言っちゃって! と続ける美奈子は、なんだかとても楽しそうだ。


「それにしても、最後の会話では心配することはなさそうだったし」

「そうだね。単純に忙しいだけじゃないかな」

まことはレイの言葉に頷いている。


「ていうか、うさぎちゃんから連絡入れておけば良いじゃない。“心配してます、少しで良いので声聞かせて下さい” って」

「いつも夜天くんからの連絡がくるのを待っているだけなんでしょ? たまにはうさぎちゃんから――」

美奈子と亜美の提案に、うさぎは首を振る。

「迷惑かけたくないもん。いつも連絡くれる時はきちんと同じ約束した時間にくれてるから、忙しい時には邪魔したくないよ」

迷惑だなんて考えすぎな気がするけどねぇ、とレイが呟くが、うさぎの耳には入らないようであった。


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夜天くんとちょくちょく連絡とるっていっても、きっとその時間は彼の性格からいくと短時間なのでしょうね〜。
でも久しぶりに二人の何気ない会話、書いていて楽しいです。



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