生徒会長
2限目の終了を告げるチャイムが鳴って、机に出ていた教科書やノートをしまっている時。


「この間はドーモ」

ふっと机の上に人影が乗ったかと思うと、頭上から声が降ってきた。

「あ、えーと……生徒会長」

うさぎは顔を上げて、自分の目の前に先日覚えた人物が立っていることを認識した。


「どどど、どういうコト、何で堂馬先輩がっ!?」

「さ、さぁ?」

うさぎの斜め後ろでは、美奈子とまことが、人気の美男子生徒会長の登場に、こっそりと騒いでいる。


 


「僕の話、つまらなかった?」

どうやら、入学式での生徒会長の話中に内輪で雑談されていたことを気にしているらしい。


「え、そんなことはっ! ……まぁ、ハイ……」

「ハハハ、正直だな!」

堂馬は苦い顔をしつつも、楽しそうである。


「スミマセン……ところでここへは何用で……」

「君と一度話をしてみたいと思っていたんだ」

「へ? そりゃまた、なんで」

目を点にして、不思議そうに聞き返すうさぎ。


「廊下やなにかで女の子とすれ違うと、皆僕のことを振り返るか、チラリと盗み見るんだけどね」

「はぁ」


「月野うさぎちゃん。君は一度も僕のことを見たことはなかった。――僕とすれ違ったことがあるのは覚えてる?」

「いいえ、全く」

「やっぱりか……」

片手で両目を覆い、上を仰ぎみてショックを表す堂馬。


 


「なんか……堂馬先輩ってああいう人だったの?」

「ちょっとナルシスト……みたいだね」

「いいえ! あれはいつもの生徒会長ではありません」

ヌッと美奈子とまことの背後に現れ、声をあげた影が一つ。


「ひぇえっっ!」

2人が驚いて後ろを振り向くと、背が低く、髪を2つのひっつめ三つ編みに結った眼鏡の少女が立っていた。

「だ、誰?」

「あ、驚かせて申し訳ありません。ワタクシ、生徒会書記、緑川路子(みどりかわ みちこ)と申します」


「ハァ」

登場の仕方に度肝を抜かれた美奈子は、まだバクバク音を立てている心臓を静めようと、胸を抑えている。


「それで、いつもと違うって?」

まことはすぐに立ち直り、緑川に質問した。


「ええ。生徒会長は、いつもはもっと真面目です。今はなんつーか……照れてますね」

「え、あれ、照れ隠し……?」

変な人……と、美奈子も目を点にしている。


 


「それでさ、僕はうさぎちゃんに興味を持ったってわけ。できればお友だちから始めたいんだけど、どうかな?」

「はぁ、まぁ、別に……良いデスケド」

「良かった、ありがとう! じゃあ、これからどうぞヨロシク。――握手」

はい、と右手を差し出され、うさぎも条件反射でその手を握る。


「――っ!?」


手と手が触れ合った瞬間。

うさぎは、自分の背筋にゾクリと冷たいものが走り、痺れのようなものが全身を駆け巡るのを感じた。

堂馬はそんなうさぎの様子には気付かず、握手している腕を二、三度振ると、手を離して笑顔で去って行った。

緑川も、その後に続いてゆく。


 


「……うさぎちゃん? 何か震えてない?」

「やだ、顔が真っ青! 保健室行く?」

まことと美奈子は、真っ青な顔で、震えながら立ち竦んでいるうさぎの様子に驚き、慌てて身体を支えてやり、保健室へと向かった。


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さようなら、ありがとう平成! よろしく令和!



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