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水城とはじめて会ったのは、実は中学生のときだったりする。 水城は覚えてないだろうけど。 中学三年の秋だった。 枯れ葉が鬱陶しいくらいに空から舞い落ちてくるのを避けながら帰宅していた。 耳にはイヤホンを突っ込んで友達に勧められた流行りの曲を聴いていたが、それも鬱陶しくなってしまっていた。 夏が好きな俺にとって秋はいいことなんか一つもない。 物悲しい雰囲気には気が滅入るばかりだし、微妙な気温には頭を悩まされる。 これから秋が過ぎ去っても待ち受けているのは冬。 冬も大嫌いな俺にとって、夏の終わりほど残念なものはないのだ。 男子中に通っている俺にとってかわいい彼女と寄り添って歩く、なんていうロマンスもなく。 「あーあ…マジでテンション下がるな…」 iPodの電源を落としてイヤホンを耳から外す。 しん、としたしじまに包まれた空間がひどく悲しく思えた。 頬をかすめる冷たい風に身を縮める。 突然ぶわっと吹きつけてきた風に目を瞑る。 枯れ葉が数枚ぶつかったのを感じた。 ゆっくりと目を開くと、一人の人間が視界に飛び込んできた。 紺色のブレザーに赤いネクタイ。 見たことのある制服だった。 「…ああ、桜中か」 部活で対抗試合をしたことを思い出した。 確か小学校、中学校、高校まで一律のマンモス校で、この辺りではそこそこ有名な学校だ。 まあ対抗試合では完膚なきまでに負かしてやったが。 グラウンドがうちよりかなりでかかったことと頭良いってことにカチンときて、全員で妬みの嵐だった気がする。 …というか俺の目の前にいるやつは、どう見ても運動部じゃなさそうだけど。 「(なーんか見るからに…地味っつーか…俺の苦手なタイプ…)」 長い前髪と黒縁メガネ。 よくいる地味キャラのテンプレだ。 俺とは完全に馬が合わない典型。 じっと観察しているとどうやら何かを探しているらしい。 つられて辺りを見渡すと、ちょうど俺の足元に本の栞のようなものが落ちていることに気がつく。 まさかこれを探してるってわけじゃあ…ないよな…。 栞を拾うと、四葉のクローバーを押し花にしてあるだけのシンプルなものだった。 桜中のやつの方を見直すと、やっぱり何かを、それなりに必死になって探しているようだ。 「おーい、桜中のメガネくーん」 「…僕のことを言ってるのか」 「そうそう君のこと。お探しのものはこれだったりする?」 「…そうだ」 うわ、愛想ないな。 桜中のやつは無表情で俺の方に歩いてくる。 冷たい風が吹き付けるとソイツの長い前髪が揺れた。 ちらり、と見えたメガネの奥の瞳。 一瞬しか見えなかったそれに、目を奪われた。 「…返してもらいたんだけど」 「え、ああ」 「…ありがとう」 風が止む。 それと同時にソイツは俺に背を向けて歩いて行ってしまう。 なんだったんだ、さっきの、あの、衝撃は。 人の瞳ってあんなにきれいなもの、だったっけ。 幸運なことにサッカー部での活動成績が功を奏して、俺はスポーツ推薦で桜学園へ進学することができた。 勉強ができない俺にとってそれはかなり衝撃的なことで、両親も部活の顧問も全員が喜んでくれた。 何せ桜学園といえば先にも述べたが有名な進学校で、かなり倍率の高いところなのだ。 そこの生徒であるというだけで箔がつくということもあり、母親なんか大喜びで近所中に自慢して回ったらしい。 入学式にもかなり気合いを入れてきた母親は本当に息子からすると恥ずかしい以外の何でもないが。 「…それにしてもすげー人数だな…」 校長の長い話に飽きてきたところで辺りを観察しはじめてみたが、女子がいること以外は特に中学と変わらない。 諦めて前を向き直すと校長が奥に引っ込んでいくところだった。 司会者が「続きまして、新入生代表の挨拶を行います」とやる気のない声で言う。 俯いて一つあくびをする。 新入生の挨拶も校長の話も似たようなもんだろ、と首を鳴らしてから顔をあげる。 「…あ」 あのときより少し短くなった前髪。 メガネの奥の瞳に、また目を奪われる。 「新入生代表、水城アキです」 水城と俺 |